2019年4月11日木曜日

ジオン•ズム•ダイクンの暗殺

 もともとジオンの黒幕は地球連邦政府の黒幕でもある巨大財閥群であった。彼等は月の裏側のサイド3に強大な敵対勢力(ムンゾ共和国)を生み出す事で、米ソ冷戦のような状況を作り出そうとしていたのだった。そこで目を付けられたのがスペースノイドの自主独立を目指すジオン•ズム•ダイクン一派の政治運動だが、理想家であるダイクンを扱いにくいと感じた黒幕はむしろ政治力に長けた側近のデギン•ソド•ザビに近づき、ザビ家を通じてダイクンを援助した。そうした中でザビ家が権力を握る事は必然の成り行きであった。

 デギン•ソド•ザビ


 しかしそういう状況の中で違和感を本能的に察知し、疑心暗鬼に陥ったたダイクンはストレスを抱え始める。自分は利用されている裸の王様でピエロであると感じるようになっていったダイクンは目に見えないしがらみを振りほどくかのように暴走を始めて、その主張はより先鋭化していく。ダイクンがこの調子では民衆の支持を得られなくなる(民衆が引いてしまう)し、ダイクン一派の政治的立場を危うくする事になると感じたデギン•ソド•ザビはこの状況に危機感を抱きつつダイクンの尻拭いに奔走する日々であった。こうした状況の中でデギンとダイクンの関係は冷えきっていた。





















 こうした状況に危機感を抱いていたのは黒幕も同じだった。そして彼等のエージェントはある日デギンにそっと耳打ちした「もうすぐ貴方がムンゾ共和国を治める事になりますよ」と。デギンは小さくうなずいた後、「手荒なマネはしてくれるなよ」と答えたのだが、これは暗殺を含めた何らかの工作を暗黙のうちに了解したに等しかった。実際、そのエージェントを野放しにし続けたのだからフリーハンドを与えたも同然だった。そしてジオンズムダイクンは演説中に倒れて死亡した。司法解剖の結果、毒殺は明確だったが、検死官も黒幕に買収されており、病死で片付けられたのだった。この事はギレンが薄々感じていた程度で、キシリアやドズル、サスロ等は全く知らなかった。

 この結果、ムンゾ共和国の首領はデギン•ソド•ザビになり、国名はジオン公国に改められた。ジオン•ズム•ダイクン暗殺の疑惑をかわすため、さらに死んで神聖化された人間の名前を冠する事が統治するうえで好都合と考えられた故の名称である。

 こうしてザビ家の体制が完成した事で黒幕はより積極的にジオンに介入出来るようになった。そこから軍備は大きく増強され、ジオン公国は一大軍事大国に成長したのだった。しかしそれは連邦との馴れ合いの中での見せかけの独立に過ぎなかった。デギンがその状況に甘んじていたのは、デギンの宿願がスペースノイドの独立よりも、己の信念に乗っ取った国家体制を構築する事にあったからで、それは徹底した国家社会主義と平等な社会の実現であり、この基盤は後にジオン軍の高い士気を生み出した。

 しかし、こうした「連邦との馴れ合いの中での見せかけの独立」を快く思わないザビ家の若頭であったギレンとキシリアが主導してクーデターを起こし、黒幕のエージェントであるデギンの側近達を一掃してデギンから実権を奪った。その結果、ジオン公国は黒幕のコントロールが効かなくなり、暴走して独立戦争を開戦させることになる。この後、キシリアは自分がクーデターに多大な貢献をしたにも関わらず、ギレンが権力を独占しようとした事を快く思わず、2人の対立は深刻化し、それはジオンの敗因の一つになった。












 

 さらにこうした内幕をダイクン派の重鎮であったジンバ•ラルから繰り返し効かされたダイクンの遺児であるキャスバル•レム•ダイクンはザビ家に深い憎悪を募らせザビ家のジオンを内部崩壊させる事になる。ダイクンは健康を害していたとは言え、最終的にはやはり暗殺されており、ジンバ•ラルは妄想を抱いていたわけでは無かった。第二次ネオジオン抗争の演説でシャアが明確に「ダイクンは暗殺された」と語ったのは、こうした事に対する裏付け調査をジオン独立戦争後〜グリプス戦役の間に行っていたからである。
 

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