
問題はキャスバルであることを明かしたシャアのポジションであった。ジオンズムダイクンの遺児であるということは本来であればアクシズの絶対的君主になり得る存在なのだが事はそれほど単純では無かったのだ。
まずダイクンがザビ家に暗殺されたという噂は当時から既に有った。そういう状況でダイクンの遺児が名前を変えてジオン軍に潜り込み、ガルマザビを庇いきれずに失脚。その後復活してからザビ家の主要メンバーが全滅した後に正体を明かす。この事が意味するのはザビ家によるダイクン暗殺の噂は本当で、シャアはザビ家に復讐を果たしたのでは無いかと言う疑惑だ。そしてその疑惑はシャアが連邦軍とも内通していたのでは無いかという更なる疑惑をも生み出す。また、シャアはジオン軍内での権力争いでそれなりに敵も作って来たので、シャアを快く思っていないジオン将校はアクシズにも一定数存在した。こうした状況を考慮すると、シャアを君主としてアクシズが纏まるとは考えにくい状況であったのだ。なぜならアクシズにはザビ家体制下のジオン軍高官が多かったからだ。

とは言うもののキャスバルのジオン復帰は既に喧伝されていたし、それはジオン残党をまとめる上での強力なカードになる。そして実際にキャスバルはいるので、アクシズとしてはこの状態を利用しない手は無かった。ただ実際にシャアをキャスバルとして担ぎ出すとアクシズ内をまとめる事が難しくなる。ガルマとキシリアの死についてシャアに疑念の目を向けるものも多かったからだ。そこで採用されたのが影武者をキャスバルとして君主に置くという方法であった。これはシャアという若く有能な軍人を実動部隊で使えるのでアクシズにとっても好都合であった。そしてシャア=キャスバルの噂は当時既に広まっていたので、その噂を逆手に取る形で影武者はシャアに似ている男が選ばれる事になったのだ。

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