2019年5月31日金曜日

終戦〜逆襲のシャアまでの経緯(3)

 アバオアクーから脱出したシャアを含む一行はまずサイド3に立ち寄り、そこからアクシズを目指した。燃料を補給し、アクシズへ向かう人員を選別するためである。ムサイ等は追加の燃料タンクが無ければアクシズまでは辿り着く事は出来なかった。またアクシズに向かう兵員は再び連邦軍の配下になる事を嫌う根っからの職業軍人とその家族、そして戦犯扱いになる事が予測される高官とその家族が中心であった。アクシズにとって幸運だったのはモビルスーツ乗りが多く参加した事だ。なぜなら貴重なモビルスーツ乗りは軍に慰留させられる可能性が高く、そうなると連邦軍の配下で働かずを得ないのだが、それはジオン軍人にとって受け入れ難い事だったからだ。こうしてアバオアクーの敗戦から連邦軍がサイド3に乗り込んでくるまでの間に彼等は慌ただしくサイド3を発ちアクシズに向かった。


 問題はキャスバルであることを明かしたシャアのポジションであった。ジオンズムダイクンの遺児であるということは本来であればアクシズの絶対的君主になり得る存在なのだが事はそれほど単純では無かったのだ。
 まずダイクンがザビ家に暗殺されたという噂は当時から既に有った。そういう状況でダイクンの遺児が名前を変えてジオン軍に潜り込み、ガルマザビを庇いきれずに失脚。その後復活してからザビ家の主要メンバーが全滅した後に正体を明かす。この事が意味するのはザビ家によるダイクン暗殺の噂は本当で、シャアはザビ家に復讐を果たしたのでは無いかと言う疑惑だ。そしてその疑惑はシャアが連邦軍とも内通していたのでは無いかという更なる疑惑をも生み出す。また、シャアはジオン軍内での権力争いでそれなりに敵も作って来たので、シャアを快く思っていないジオン将校はアクシズにも一定数存在した。こうした状況を考慮すると、シャアを君主としてアクシズが纏まるとは考えにくい状況であったのだ。なぜならアクシズにはザビ家体制下のジオン軍高官が多かったからだ。


 とは言うもののキャスバルのジオン復帰は既に喧伝されていたし、それはジオン残党をまとめる上での強力なカードになる。そして実際にキャスバルはいるので、アクシズとしてはこの状態を利用しない手は無かった。ただ実際にシャアをキャスバルとして担ぎ出すとアクシズ内をまとめる事が難しくなる。ガルマとキシリアの死についてシャアに疑念の目を向けるものも多かったからだ。そこで採用されたのが影武者をキャスバルとして君主に置くという方法であった。これはシャアという若く有能な軍人を実動部隊で使えるのでアクシズにとっても好都合であった。そしてシャア=キャスバルの噂は当時既に広まっていたので、その噂を逆手に取る形で影武者はシャアに似ている男が選ばれる事になったのだ。

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