2019年5月15日水曜日

アストライアの暗殺

 ジオン•ズム•ダイクンの正妻はローゼルシア•ダイクンだったが、ローゼルシア(オリジン版と違いブロンド)は権力志向が強いインテリだったためダイクンは気が休まらず、アストライアとの不倫に走ってしまう。そしてキャスバルとアルテイシアが生まれる。

左からアストライア、ダイクン、ローゼルシア


 しかし当時既にムンゾ共和国における革命の指導者であったダイクンに愛人がいるだけでは無く、その間に子供までいると言う事はダイクン一派(ザビ家含む)にとっては絶対に知られてはいけない秘密でありスキャンダルであったため、キャスバルとアルテイシアはローゼルシアの子として育てられ、アストライアは乳母であり家政婦であるとされて来た。しかし当然、血は繋がっていないので2人の子はローゼルシアよりもアストライアになついていた。

 ダイクンもまたダイクンで、日陰者の立場をアストライアに押し付ける事に負い目を感じていたので、アストライアには高級マンションの一室を与え、またローゼルシアよりも常に寵愛して来た。ザビ家を含めたダイクンの周辺はアストライアが家政婦として2人の子やダイクン家に近づく事さえ嫌っていたが、こうしたアストライアの境遇はダイクンの強い意思によって周囲の反対をゴリ押しする形で実現していたのだ。そして当時、ダイクンという絶大な支持を誇る指導者に頼り切っていたムンゾ共和国の高官たちはこうしたダイクンの希望を受け入れざるを得なかった。ダイクンの精神的安定が何より重要であったからだ。ジオンズムダイクンとローゼルシアは完全な仮面夫婦となっていた。

 ただし、こうした現状は既にダイクンがある意味厄介な存在になっている事を意味していた。ダイクンは既に革命を成し遂げたし、その思想や理念もほぼ全て吐き出した。であれば、ここで非業の死を遂げて悲劇のカリスマと化してもらうのも一つの道では無いか。そう考える者達が出て来たのだった。

 ザビ家の黒幕とも言える出資者ローゼンベルク家(仮称)は世界的な巨大財閥にも繋がっており、彼等はムンゾ共和国が地球連邦政府のカウンター勢力として軍事大国化する事を臨んでいた。そしてそのためには思想的かつ哲学的で扱いにくいダイクンよりも政治手腕に長けたザビ家一党の方が都合が良かったのだ。ことここに至りて彼等はダイクンを暗殺しザビ家を権力の座につける事を計画しはじめた。そしてその計画はザビ家の棟梁であるデギンにのみ伝えられ、デギンの了承を得て実行に移された。デギンから見て当時のダイクンは増長し、かつ発言もエキセントリックになっていたため、このまま放置すると革命政権そのものが危ないと言う判断もあったのだ。

 こうしてダイクンは暗殺されてしまう。そしてダイクンを神格化かつカリスマ化してムンゾのシンボルにしたいザビ家一党にはアストライアの存在は非常に危険な時限爆弾と化してしまった。こうして彼等はアストライアをも葬り去る事を決意し、投身自殺と見せかけてアストライアを毒殺してしまう。アストライアは社会的には認知されていなかったため、この一件は闇に葬られた。しかしキャスバルとアルテイシアはアストライアが自殺では無いと言う事を誰よりも解っていた。その直前にアストライアはキャスバルとアルテイシアを引き取るという話を彼等にしていたからだ。キャスバルとアルテイシアにとってもローゼルシアの元では暮らしたく無いと考えていたのでそれに賛成だった。


 なお、このアストライア暗殺を手助けしたのはローゼルシアとダイクンの間に生まれた娘アンジェリカ•ダイクンであった。彼女はアストライアとその子2人の存在が多大な精神的ストレスを自分自身とローゼルシアに与えている事からアストライアを非常に憎んでいたのだった。ジオンズムダイクンさえ憎んでいたのが彼女であった。

 ところでジンバラルは革命当時からのダイクンの親友であり、ダイクンが最も信頼していた側近であったので、当然、アストライアとダイクンの事も良く知っていた。さらにジンバラルはダイクンが暗殺された証拠を掴んでしまっていたのでアストライアの死にも強い疑念を抱き、さらにアストライアが殺されたなら自分も危ないと考えた。そこでジンバラルはキャスバルとアルテイシアにアストライアが実母である事を告げて彼等を連れて地球に脱出する道を選んだのであった。アストライアの2人の子を欺瞞に満ちたザビ家の率いるムンゾ共和国から引き離したいと考えたからだ。そして当然、ジンバラルはダイクンの死のみならずアストライアの死もザビ家の暗殺であった可能性が有る事を強く2人の子に吹き込み、これがキャスバルの心に深い爪痕と残す事になった。ジンバラルは地球でいつの日かダイクン派が再興する事を夢想して2人の子供に帝王学と英才教育を施すのであった。


 なお、この後ローゼルシアとその娘アンジェリカはダイクンの遺産を相続してサイド6へ移住。ダイクン性を捨てて富豪の一市民として大邸宅で余生を過ごした。ザビ家の出資者で暗殺の実行犯であるローゼンベルク家はその秘密を知っていたアンジェリカをも暗殺しようとしたが、ゴシップ紙が「ダイクンは遺産目当てのローゼルシアとアンジェリカに謀殺された」等と言う的外れな記事を書き立てたため、スケープゴートとして生きていてもらった方が都合が良いと考えて放置する事にした。ローゼルシアとアンジェリカは共にジオンズムダイクンを憎んでいたので、その死の背景について深入りするつもりは無かった。それどころかジオン公国が独立戦争に突入して行く様を見て泥船から早く降りて良かったと胸をなで下ろすのであった。

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