劇場版第一部で数少ない見せ場となりうるこの話をもう少し煮詰めてみたい。まずはエッシェンバッハ親子のキャラから。
イセリナの父、ヨーゼフ•エッシェンバッハはオリジン版にならい(ニューヨークでは無く)ロスの市長で元北米連合の元大統領候補。反ジオン派だったが財界の要請と責任を鑑みてジオン支配下で市長職に留まる。その傍ら配下に連邦軍のスパイを従えており、近隣の連邦軍基地と内通していた。
次にイセリナ•エッシェンバッハだが行動原理に日本人ぽさが有るので日米のハーフとしたい。幼い頃に死別した母親の名前が伊勢原•理奈であり、イセリナは母のあだ名であった。つまりヨーゼフ•エッシェンバッハと伊勢原理奈の間に生まれたのでイセリナ•エッシェンバッハとなったのだ。典型的な箱入り娘では有るが、性格は奔放で原作よりは少し強いキャラにしたい。
イセリナは地球人や連邦軍兵士とは明らかに立ち居振る舞いの異なるジオンに惹かれていき、密かにジオンシンパとなっていた。そして時間の問題でジオンのスターであったガルマザビとつき合うようになっていく。これはヨーゼフから見ればオウム事件における上祐ギャルのようなもので決して許せるものでは無かった。なおイセリナは父が連邦軍と内通している事を知っており、その事で気を病んでいた。
ガルマとイセリナは互いに似たような境遇でありつつも性格が違っていたので相性が良かった。イセリナはシャアの事を「変な格好の赤い人」と言い、これがガルマの気を良くして、ガルマも「アッハッハ、アイツはね、めっぽう腕が立つが相当な変わりもんで士官学校時代もオレくらいしか友達はいなかったんだよ。」等とシャアの事を語っていた。
ジオンとのパーティーの夜、イセリナはヨーゼフにガルマとの結婚を考えている事を話すがビンタされて説教される。原作のような傲慢な感じでは無く「ジオンは負けていずれ撤退する。そんな時に君とガルマの関係が公になったらロス市民になぶり殺されるぞ。ただでさえジオンに追従する我々を快く思っていない市民は多いのだ。」と言う事だった。
このような中、シャアも地球に降り立ち、ロス近郊でホワイトベースと交戦していた。「木馬と交戦中だ、応援を要請する。木馬をやればジオン十字勲章ものだとガルマ大佐にお伝え頂きたい。」シャアはジオン基地に連絡を入れた。自分から応援要請が有れば負けん気の強いガルマなら自ら出撃してくる可能性が有る。そこでガルマがホワイトベースにやられればそれも良し。それがシャアの算段であった。
ここでシャアの読み通り、ジオン基地からガルマ自らが出撃して来た。しかし、その事はヨーゼフ•エッシェンバッハ配下のスパイによって近郊の連邦軍に漏れていた。「ホワイトベースを追撃するためにガルマザビが出撃した。出撃可能な連邦軍は支援を頼む。」これを聞いた連邦軍は色めきたって戦闘機を派遣して来た。ところが、この時、ヨーゼフとスパイとの会話を聞いてしまったイセリナはジオンの基地に駆け込み、その事をジオン兵に伝えた。「ガルマ大佐の出撃が察知されました。連邦軍の増援が来ます!スパイが基地に潜り込んでいます。」ここまでがイセリナに言える限界だったが、前々からスパイの存在を察知していたジオン軍司令官はその情報を信じ、ガルマ部隊の増援を発進させたのだった。こうして連邦軍とジオン軍の支援部隊がホワイトベースとシャアが交戦する地域に向かう事になった。出撃命令を下す一方でジオンの司令官は「ロザリオ秘書官の部屋に捜索に入れ。背後関係を探る為に泳がせておいたが、もう限界だ。」とスパイの摘発の指示も出した。
ここで好奇心旺盛で奔放な性格を発揮してしまったのがイセリナだ。ガルマの事が気がかりで仕方が無いイセリナは以前から自らの護衛を担当していたジオン軍のダロタ中尉に銃を向け、柔らかい口調ながらも武装哨戒機でガルマ支援隊の後を追う事を命じた。「後でどうなっても知りませんよ、お嬢さん。」ダロタは応じるしか無かった。
ジオン基地の管制塔はイセリナに乗っ取られた哨戒機が出撃した事を知るが、仮にイセリナが死んでも自業自得で済む、一方でガルマを死なせたら大失態になると言う判断から戦力は少しでも多い方が良いと判断し、ダロタ中尉に「かまわん、行って来い!お嬢さんの望み通りにさせてやれ!」と許可を与えてしまう。
イセリナ機が戦闘エリアに到着した時、既にガルマ機はシャアの策略によってホワイトベースに特攻をかけんとしているその時だった。
ガルマの死を目の当たりにしたイセリナ。そこに両軍の支援部隊が到着し、激しい戦闘が始まる。激高したイセリナはダロタ中尉から操縦桿を奪い、ホワイトベースに攻撃をしかけようとするが、機体は被弾し煙を吐く。ここでダロタ中尉は操縦桿を奪い返し戦闘空域から離れた所でイセリナを強制的にパラシュート脱出させ戦闘を続行するも、被弾し大破、死亡する。「逃げるのですか?ダロタ!」「逃げませんよ!我々のような名も無い兵士にも五分の魂が有ると言う事をお嬢様にご覧にいれましょう!」そんなやり取りが有った。
イセリナはパラシュートで降下しながら荒廃したロスの街とガルマ機の残骸、墜落して行くダロタ機を目にして絶望し、拳銃にて空中で自殺を遂げる。それを目撃するホワイトベースのクルー達は名前も知らないイセリナを埋葬するのだった。
ガルマの死亡に安堵したのはヨーゼフ•エッシェンバッハだった。しかしそれもつかの間で間もなくイセリナ死亡の一報を受けてガックリと肩を落とす。さらにそこにジオンの憲兵隊が入室する。「ロザリオ秘書官の自供が有りました。エッシェンバッハ市長、貴方をスパイ容疑で拘束させて頂きます。」
ヨーゼフは憲兵達に背を向けて開いた窓から夜のロス市街地を眺めつつ、密かに袖から毒薬を取り出して口に入れた。「君たちは知らんだろうが、戦争が始まる前はここから素晴らしい夜景が見えたのだよ。」そう言うヨーゼフを両脇からジオン兵が抱え込んだ瞬間にヨーゼフは吐血して死亡するのだった。
なお、この市長のスパイ容疑と服毒自殺事件は地元メディアにスッパ抜かれた。スパイはロザリオの他にもいたからだ。これはロス市との良好な関係を世界にアピールしていたジオンに取っては痛手となる醜聞であった。さらにガルマザビの死亡も重なり、ジオンの地球方面軍が動揺する中、連邦軍はここぞとばかりにオデッサ作戦の決行を決定し、その本格的な準備に入るのだった。
なお、ザビ家への復讐の第一段階を果たしたシャアはひとしきり笑った後、イセリナの自殺を見て我にかえった。そしてジオン軍人として大失態をやらかしてしまった事に気がつく。シャアの復讐劇全体を考えても、一時的な感情に任せてガルマという小物から手をかけてしまった事はミスだった。この結果、その他のザビ家の面々に目を付けられ、肝心のギレンやデギンへの復讐が難しくなったからだ。
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