2019年5月18日土曜日

オデッサの戦い

 オデッサ作戦編について書くにはまずマ•クベのキャラ設定を確立させなければならない。マクベは実はバツイチであった。10年以上前にDV含みで妻に逃げられ1人息子であったジュリアス•ファン•クベは妻が引き取り、ジュリアス•リーとなった。ただDVというのもマクベが一方的に悪いわけでは無く、文学や芸術にうつつを抜かして構ってくれないマクベに妻が欲求不満となり辛く当たるようになった結果であった。


 マクベの妻に引き取られた1人息子のジュリアス•リーは幼い頃に父のDVを見ており、それがキッカケでひねくれて不良になった。マクベは普段は温厚な紳士だが内弁慶でキレやすいところが有ったのだ。


 不良グループに入ったジュリアスは遊び人として気ままに暮らしていたがジオンの国家総動員令による徴兵に引っ掛かり、ジオン軍に入隊させられる。そこでもトラブルメーカーとなった彼は最前線のソロモン送りになりいつ死んでもおかしく無い毎日を過ごしていた。コレと言った技能を持たない彼は簡易モビルポッドに乗せられ「移動砲台」等の役割を果たしたりしていたのだったが、上官等は彼がマクベの実子である事などは知らなかったのだ。


 そういう状況をジュリアスから聞いたマクベの元妻は当時すでに中将にまで出世していたマクベに相談し、その結果ジュリアスはマクベの下でオデッサ基地の後方任務につく事になった。ところがジュリアスのマクベに対する態度は面従腹背そのもので、オデッサ基地でも相変らず良からぬ仲間とツルんでいた。マクベはこのような複雑な家庭の事情を抱えてオデッサの防衛戦を迎える事になる。


 またマクベは部下にも恵まれずにいた。重用していたランバラル隊がドズルザビからの命令でホワイトベース追撃に全精力を注ぎ込んだ結果、壊滅し、さらにその穴埋めとして送り込まれて来た黒い三連星もキシリアの命令でホワイトベースに掛かりっきりとなった。マクベとしては彼等エースパイロットの部隊を連邦軍の本隊にぶつけたかったのだが、ホワイトベースとガンダムと言う得体の知れぬ敵の出現によって、その算段は大きく狂わされていた。


 ただし、そうした事情は別にしてもオデッサ基地の防衛は苦しいと言う事をマクベは知っていた。エルランやジュダックと言った連邦軍に潜り込ませたスパイからの報告で、オデッサに集結しつつある連邦軍の規模と、モビルスーツGMの実戦配備についての情報を得ていたからだ。


 しかし、その一方でオデッサ基地の戦力をもって連邦軍の大部隊を叩けば以後の地球での戦いを有利に持ち込めるし、幸いにもマクベの先読み能力によって近隣地区に多くの小規模拠点を築いていたので、そこに逃げ込むと言う事も可能であった。なお、こうした小規模拠点の開拓に尽力したのがランバラル隊であった。そもそもオデッサ基地は今後10年分に相当する資源をジオン本国に送っていたが、ジオンの国力を考えると1〜2年しか戦争継続能力が無い事をマクベは理解していたので、鉱山基地としてのオデッサは彼にとっては用済みだったのだ。


 そこでマクベはオデッサ防衛戦の主目的を以下のように設定して、オデッサ基地そのものは放棄する事を決定した。

1)オデッサ基地の防衛力を持って連邦軍に大きなダメージを与える事。
2)オデッサ周辺に点在する小規模拠点に兵力を分散させる事。

 なお、この時点でジオンは地球制圧という当初の目的が短期的には不可能である事を悟っており、地球方面軍の主目的を「連邦軍の後方基地である地球上の各基地にストレスをかけて宇宙での戦いを有利に持ち込む」という方向性にシフトしていたのだ。なので、このマクベのプランはその新しいロードマップに合致するためキシリアにも「渋々ながら」採択される事になった。そしてマクベに対してはオデッサ防衛戦が終了し小規模拠点への移設が落ち着いたら宇宙に帰還しろと言う指令が出ていた。これを聞いたマクベは願ったり叶ったりで感涙寸前であったと言う。そしてますますキシリアへの忠誠心を深めて行く。一方、それはマクベの心にらしからぬヒロイズム〜命を捨ててでもと言う〜の感傷を植え付ける事にもなり、皮肉にもマクベの死の遠因ともなった。


 ところで、当時のジオンの最も現実的な勝利プランはルナツーの制圧によって地球圏全体を掌握してから有利な条件で連邦軍と講和条約を締結する事であったのだ。そしてその講和条約の有効期間内に消耗した国力と戦力の立て直しを行うというのがジオンの当時のプランであった。


 さて、オデッサ基地攻略に向けて連邦軍が進撃を始めると、ジオンはモビルスーツ隊を搭載したガウ攻撃空母を小規模拠点への脱出ルート上に飛行させ、連邦軍部隊の中に次々と降下させていった。航空機の支援を受けながらこれらのモビルスーツは突破口を開いて行き、そこを陸上戦力が小規模拠点に向けて進行していく。連邦軍は当時モビルスーツを小数しか配備していなかったため、この作戦は功を奏した。なお連邦軍兵士は基地制圧を目的としていたため、前方から迫ってくる敵とすれ違った後は追撃してくる事は無かった事もこの作戦が上手く行った理由でマクベ一流の心理戦であった。


 オデッサ基地本体に関しては、戦車などの従来兵器や固定砲台を主力として戦力が60%を切るまで基地を防衛する事を計画していた。そしてその後は基地を放棄し前方に進撃を開始し、先行した脱出部隊と連携して連邦軍の攻撃部隊を挟み撃ちにすると言う作戦であった。


 ところで、オデッサ基地に向かう連邦軍は、ある事を気にかけていた。それはまだ基地に留まっているマクベの本隊が、陸上を突破してくるのか、背後の黒海を突破するのかという事が解らなかったからだ。



 ところがここで予想だにしない出来事が起きる。マクベの息子、ジュリアスとその仲間達が連邦軍の猛攻に恐れをなして「こんな所で死んでたまるか!」とばかりに勝手に航空機で戦線を離脱しようとしたのだった。彼等は不運にも連邦軍に撃墜され、パラシュートで脱出するも連邦軍の勢力圏のど真ん中であったため捕虜になってしまう。連邦軍兵士に「はかなければ脚を打ち抜くぞ。ココは戦場だ、貴様等の脚の一本や二本が無くとも誰も何とも思わん。」と脅された彼等はマクベ本隊が地上ルートを突破するという情報を連邦軍に与えてしまい、予想される幾つかのルートにモビルスーツ部隊が配置される事になった。



 オデッサ基地を放棄したマクベ本隊が前方の連邦軍に向かって進撃を始めた。そこに連邦軍のモビルスーツ部隊が立ちはだかり、交戦が始まる。史上最大規模のモビルスーツ同士の戦いであった。


 当初は後方のダブデで指揮を取っていたマクベであったが、ここで前線の兵士の交信を聞いて動揺する。ガンダムが出たと言うのだ。ジム部隊の護衛を受けてアムロレイの搭乗するガンダムがマクベ本隊討伐のために駆り出されていたのだった。
 連邦軍の白いモビルスーツ。。シャアの攻撃を幾度となく退け、ガルマを葬り、ランバラルと黒い三連星を死に至らしめたモビルスーツである。ドズルのみならずキシリアまでもが高い感心を寄せているガンダムを自分が倒せば、オデッサ基地を失った事に対するせめてもの埋め合わせが出来てキシリアに対してのメンツを保つ事が出来る。そう考えたマクベは護衛のモビルスーツ部隊を率いて自らギャンでガンダムに立ち向かう事に決めた。(ただしそこにはガンダムに対してダブデが大きな的でありやられる可能性が高いと言う計算も有った)しかし護衛のモビルスーツは次々と倒され、マクベも最終的にはやられてしまう。そして有名な最期の台詞「ウラガン、あの壷をキシリア様に届けてくれよ。あれは、いいものだ!」を残して散って行くマクベであった。完璧な策士であったが自分の息子だけは全くコントロール出来ずにそれが敗因となったのだ。


 その一方でマクベ本隊の一部はオデッサ基地周辺の小規模拠点まで落ち伸びる事に成功し、彼等の一部はジオン残党として戦後も連邦軍を悩ます事となった。またマクベの命令で基地に残された一部の兵士と負傷兵達は降伏し連邦軍の捕虜となった。なおこの一件で辛酸を舐める事になったマクベの息子はその後のジオンによるゲリラ戦の際に脱出に成功し、以後は連邦軍に対する反感から長く地球上で気合いの入った筋金入りのジオン残党兵として抗戦を続ける事になる。最終的な消息は不明。


 なお、こうした点在するジオンの小規模拠点はキャリフォルニアベース等から空からの補給を受けて長く存続し、大戦中も連邦軍が奪還したオデッサ基地を散発的なゲリラ攻撃で悩ませる事になった。結論から言うとオデッサの戦いは言う程ジオンの一方的な敗北では無かったのだ。そしてそれをもたらしたのはマクベの知略であった。


 ところで、問題の壷発言についてはあまり知られていない事実が有った。実はマクベとキシリアの間でかわされる極秘情報のコードネームが「北宋の壷」であったのだ。マクベはこの時、独自の情報網でシャア=キャスバルという事を掴んでおり、タイミングを見計らってその情報をキシリアに届けようとしていたのだ。そして「良い物」というのは極秘情報の中でもトップシークレットを意味する表現であった。つまり、マクベが死ぬ間際に言った「あの壷をキシリア様に届けてくれよ。あれは良い物だ。」という台詞はマクベのパソコンに保存されていた「シャア=キャスバル」の情報をキシリアに届けてくれよと言う意味であったのだ。しかし御坊ちゃま育ちでコネ出世の副官であったウラガンは本物の壷の方をキシリアに渡してしまい、シャア=キャスバルはひとまずバレずにすんだ。後日、キシリアがマクベの遺品となったパソコンの「北宋の壷」フォルダからその情報にアクセスしたのはソロモン戦の直前になってからであった。ウラガンから北宋の壷を受け取ったキシリアだったが、しばらくしてピンと来てマクベのパソコンを漁ったのだった。最期まで部下に恵まれないマクベであった。インテリの悲哀を悲しいまでに体現している男である。


 ここでモビルスーツネタを少し。オデッサに投入された陸戦型のドムは茶色か緑に塗装されていた。黒い三連星が死亡したのはオデッサ開戦の直前も直前であり、その当時の一般兵が三連星カラーを許されたはずが無い。ドムが黒と紫になったのはその後宇宙用に開発されたリックドムからであり、これは三連星を追悼する意味と、宇宙にマッチすると言う意味で決められたカラーだ。なおジャブロー降下作戦の時点では地上用のドムも三連星カラーに塗装されていた。
 次にギャン。ギャンは当時極秘情報として伝わっていたV作戦つまりガンダムにインスパイアされたジオンの技術者によって開発され、当初のコードネームはギャンダムであった。これはカリフォルニアベースをキャリフォルニアベースと発音するジオン訛りに由来するものだが強度の訛り(コーヒーをコーシーと発音するようなもの)なのでシャアやガルマは当然「ガンダム」と発音していた。つまりジオン版ガンダムである事を表現した名前がギャンダムで、それが最終的に短縮されてギャンとなったのだ。なお当時のジオン兵がカリフォルニアをキャリフォルニアと発音していたのはジオン制圧化のカリフォルニアである事を強調するためにそう呼ぶ事がジオン軍内で決められていたからだ。なおこうしたギャンの開発経緯を聞いていたマクベはランバラルや黒い三連星がガンダムに拘るのと合わせて「どいつもこいつもガンダムガンダムうるさいな、いい加減にしろよ全く。」と感じており、それが最期にガンダムに遭遇したマクベをギャンで出撃させる原因の一つになったのだ。

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