2019年5月20日月曜日

ジオン公国が軍事大国化したメカニズム

 現在の公式設定どおりの歴史ではジオンはあれだけの軍事大国に成長する事は出来ないはずで、逆シャア時代のネオジオンレベルが良い所だろう。ズゴックやマゼラアタックを開発して地球侵攻など夢のまた夢。


 ジオンがあそこまで軍事大国化するためには少なくともUC70年代前半からその計画が進められていたはずで、そこには資金を注ぎ込んだ巨大財閥群の存在が有ったはずだ。世界経済を動かし軍事と政治をもコントロールする巨大財閥群である。

 
 ではなぜ彼等はジオンに肩入れしたのか。まず一つの理由は「スペースノイドによる自治独立運動」というのは放っておいてもいずれわき上がってくる避けては通れない問題だったという事が挙げられる。であれば、そのつど湧いてくる独立運動を潰して行くのでは無く、本家本元に介入してコントロールし無害化してしまう事。これが一番手っ取り早いので月の裏側で秘密工作が行いやすいサイド3が選ばれてその標的となった。ジオン•ズム•ダイクンがサイド3に移住したのはUC0052であり、その翌年には首相になっている。この「コントロールされた独立運動」の最たるものがデギン•ソド•ザビであり、故に彼は終止穏健派であったのだ。なお財閥群の計画ではスペースノイド自治独立派をサイド3の一点に集約させた後で過激化させて戦争を起こさせ、スペースノイド自治独立派=悪のレッテルを貼ると同時にその運動を根絶やしにするという事であった。


 次に彼等巨大財閥群はスペースコロニーが次々に建設されて人口が無尽蔵に増えて行く状況に危機感を抱いていた。人口が増えすぎるとコントロールする事が難しくなるからだ。こうした状況に抑制をかけるためには軍事的な緊張状態を作り出してスペースコロニーの危険性を訴えた上でその数に規制をかける事が必要であった。そのためには適役となる存在が必要であり、その適役は自分達がコントロールしておく必要が有った。それがジオンである。


 さらに、彼等はまだ全世界をコントロール出来るだけの力は持っていなかった。そしてそれを手に入れるためには世界が2つに割れて対立していると言う状況は都合が良かったのだ。なぜなら両方の陣営に出資浸透し対立を煽り、両陣営が疲弊して弱り切った所で全てを手に入れるという古典的な手法が可能になるからだ。そしてこれを実現するためにはジオンが軍事大国化し、その上でスペースノイドの自治独立を主張してそのイデオロギーで世界を二分する必要が有ったのだ。


 なお、実際にジオンに出資していた連中はそうした巨大財閥群の中では下っ端の連中であった。故に彼等は自分達の利益を中心に考えて単純なビジネスとしてジオンを軍事大国化させていった。そしてそこに市井の投資家達も群がってくるのだが、彼等にはもちろん全体を見渡す思想やプランは無い。故にジオン•ズム•ダイクンやザビ家の連中もその背後に大きな政治的な謀略が潜んでいる事に気がつかなかったのだ。


 ただし、こうした巨大財閥群の特徴として、彼等は常に戦争を望んでいるというわけでは無い。確かに戦争は彼等にとって儲かるビジネスだが思いもかけない異変が起り、彼等の立場を危うくするリスキーなイベントでも有るのだ。そもそも彼等は既に大富豪であるから基本的には自分達の地位を保全する事を最優先に考えているので根本的にはむしろ安定を好む。しかし同時に少しづつでも自分達の支配権を拡大していかないといつ権力の座から引き摺り落とされるか解らないという事も良く理解している。権力闘争と言うのは一度始めると止まる事は出来ないのだ。故に彼等は目立たないように少しづつでは有るが自分達の計画を実行していくのだ。彼等は決して表舞台には出ず、ダルシア首相やデギン•ザビその他ジオン公国の高官達の間に接触そして浸透していき影響力を高めていった。


 もちろん、ガンダムの世界の中でこうした話は本筋では無い。しかしザビ家の暴走だけで戦争が始まったとすると無理が生じてリアリティが損なわれる。設定上の無理をザビ家に背負わせるために彼等がヒーローものの悪役のような幼稚な描かれ方をする事になってしまうのだがそれではガンダム的では無い。故にストーリーの随所にこうしたバックグラウンドを臭わせて行く事でよりリアリティが生じ、ザビ家の面々のキャラクター描写も深みが有るものになるだろう。


 新約ガンダムの世界ではジオンの軍事大国化はダイクンが暗殺されてデギン公王の治世が始まったUC0068から始まる事にしたい。この暗殺自体が黒幕による本格介入の開始を意味していたからだ。そしてUC0077の暁の蜂起の時点では確かに連邦軍は駐留していたが、軍事規模ではジオン防衛軍が駐留連邦軍を上回っており、その直後のギレンとキシリアによるクーデターによって駐留連邦軍は完全にサイド3から撤退した。。という事にしたい。


 なおギレンとキシリアによるクーデターとはデギンの周辺に巣食っていた連邦政府と通じた高官達を排除し、ジオンと連邦の馴れ合いを断ち切り、実権をデギンからギレンの元に移行させる事が目的であった。暁の蜂起の直後の混乱を逃さず夜間に行われたと言う。このクーデターによってジオンは黒幕のコントロールから外れ、彼等が想定していた以上の大規模な戦争を引き起こす事になった。


 もちろんコロニー落とし等と言う蛮行は黒幕である巨大財閥群も想定はしていなかった。しかし皮肉な事にこれによってスペースコロニーの危険性が再認識され、その数に規制をかけて連邦政府の強い管理下に置く事の重要性が主張しやすくなり、ティターンズを生み出す遠因にもなったのだ。

 
 言うなれば東西冷戦が一歩間違ったらこうなってたよという世界だろうか。

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