2019年5月12日日曜日

ジオン地球侵攻編

 オリジンと1stガンダムの間に「ジオン地球侵攻編」を挟む事が出来る。ただ、このパートは難しい。主要人物を死なす事は出来ないし、アムロもガンダムに乗っていない。かといってメイン級の新規キャラを作るのは愚の骨頂だし、MSV系やOVA系のキャラを引っ張ってくるのも野暮ったい。どうしたものか少し考えてみた。


 テーマ:ジオンの地球降下作戦を時系列的に描きながら本編に繋がる人間関係の布石を固めて行く。

★オーストラリア不可侵条約

 本編は南極条約のシーンから始まる。ここでマクベの口からオーストラリア不可侵条約の締結が提案される。コロニー落としで甚大な被害を被ったオーストラリアをジオンに統治する能力は無いし、そこに侵攻する事によるジオン国内を含めた世論の離反を懸念したものだったが同時にそれはジオンによる地球侵攻の意思表示でもあった。そのため、この発言で連邦側の高官達にどよめきが起きる。
 ブライト•ノアは開戦時には士官学校出のオーストラリア海軍軍人で艦長補佐を務めながらも休日には仲間とオープンカーでナンパに繰り出して遊び人を気取っていた。(なのであの髪型)コロニーが落ちたシドニーを上空から見たブライトは連邦軍に志願する事を決意。入隊と同時に宇宙行きを打診され、艦長候補生としてサラミスで半年間経験を積んだ後ホワイトベース勤務となる。



★ヨーロッパ方面軍司令官マクベ

 頭脳派のマクベはジオンによる地球統治が長期的には不可能で有る事を悟っており、地球侵攻の目的を「資源の獲得」と「連邦基地の破壊」に絞っていた。博識のマクベは太平洋戦争における山本五十六のような先見の明を持ってジオンを眺めていたのだ。上記の目的からマクベは自ら資源確保のための再重要地点であるオデッサへの降下を志願し、そこに本拠地を構え、大小様々な採掘施設などを次々に制圧していく。これを請け負っていたのがランバラル隊だった。マクベとラルは境遇も性格も全く異なるが、ジオンを斜めから見ていたという点では共通しており、同じようなビジョンを持っていたので奇妙な連携がそこには有ったのだ。


★ランバラル地球降下

 ランバラル一派はジオンの地球降下作戦が始まってすぐに厄介払いで地球に降下させられた。原作ではガルマの敵討ち部隊で地球降下となっているが、新約ではガルマの敵討ちは「それによって宇宙に帰れる」という条件とのトレードオフだったと言う事にしたい。さらにラルの後を追ってシャアも地球に降りてくる。シャアが地球に降下した理由はドズルからガルマの護衛を頼まれての事だった。ランバラルが降りたのはヨーロッパだがシャアが降りたのはアメリカと言う事になる。
 ここでランバラルはキャスバルとしてのシャアとヨーロッパで再開し、2人は戦争の勝利を第一義としつつもダイクン派による正統ジオンの再興を誓うのだった。シャアはオデッサの視察とマクベへの謁見という名目でヨーロッパに出向いていた。


 なおランバラルはヨーロッパ方面軍に配属されたので直属の司令官はマクベ中将であり、ランバラルは地球降下直後にマクベに謁見している。一見粗野でありながら学識が有り野蛮である事を嫌うランバラルはマクベの教養人ぶりと先見の明に感銘を受ける。特にジオンが長期に渡って地球を統治する事は不可能であるという点で2人の意見は一致し、ランバラルに小規模な採掘施設や向上、軍事基地の制圧を任せたいマクベの思惑とラルの希望は一致する事になった。一方でハモンはマクベに良い印象は持たなかったがインセンティブ報酬の支払い評価はフェアーであったため不満は無かった。いずれにしても、こうしてランバラルのゲリラ屋生活が始まる事になる。「ハモン、私は良い働き場所を得た」とランバラルは言ったという。


 ところでキシリアの依頼で地球方面軍の総司令官となったマクベだが、捨て駒にならないための保証としてガルマザビを北米方面軍司令官として配下に置いていた。またそれだけでは無くキシリアとの間を取り持つ連絡役としてウラガンが直属の部下として配置された。ウラガンはザビ家のスポンサー企業の御曹司でありボンボンであったが、それなりに優秀であったためコネで出世した男だった。ウラガンはザビ家寄りであったため、ラル家一派とは反目しており、ランバラルを信用しておらず盗聴器で動向を探るなどしていた。


 なお、マクベとキシリアの間でかわされる極秘情報のコードネームが「北宋の壷」であり、マクベはその言葉がコードネームである事を悟られないために本物の北宋の壷を身近に置いていたのだ。なおウラガンはランバラル隊にしかけた盗聴器からラルがシャアと密会していた事実を突き止める。この報告を受けたマクベはウラガンの独断専行を叱ると同時にシャアについての調査を開始し、シャア=キャスバルで有るという事実を突き止めてしまう。しかしマクベはラル家とザビ家の対立などには全く興味が無かったので、その情報を自分が宇宙に戻るための切り札にしようと秘密にしておく事にした。なお、マクベが(オリジン版にならいオデッサで)死ぬ間際に言った「あの壷をキシリア様に届けてくれよ。あれは良い物だ。」という台詞はマクベのパソコンに保存されていた「シャア=キャスバル」の情報をキシリアに届けてくれよと言う意味であり「良い物」というのはマクベとキシリアの間で極秘情報をさす用語だったのだが、ボンボンのウラガンは本物の壷の方をキシリアに届けてしまい、シャア=キャスバルはひとまずバレずに済む。キシリアが宇宙に帰還したザンジバルにあったマクベのPCからそのデータにアクセスしたのはソロモン戦の直前であった。


シャアとガルマ

 シャアはドズルの指令通りガルマと合流する。ガルマが派遣されていたのは北米であり、マクベのヨーロッパとは離れていた。ところでシャアはリノをエージェントとしてガルマの部隊に潜り込ませていた。こうした事が可能になるのはジオンの上級将校の中に少なからず旧ダイクン派がいたからで、シャアの早すぎる出世はそうした情報網をフル活用した結果であった。そしてリノがガルマ隊の動向をシャアにリークする事によりシャアはタイミング良くガルマの危機を救う事が出来たのだった。つまりシャアはこの時点ではガルマの暗殺など考えていない。眼中に無かったのだ。これはザビ家の動向を探るためと手柄を立てて出世するための行動だった。


 しかし、ある時「基地の内部と外部の間での不審な通信が傍受された」としてリノが拘束される。通信相手を聞いて驚いたのはガルマで、それはシャアだった。ガルマが問いただすとシャアは自らがキャスバルである事を認め、自分の目的が政治家としてジオンに復帰する事であると語った。マスクを取ったシャアを見てガルマは幼い頃の僅かなシャア(キャスバル)の記憶を取り戻した。


 シャアの話を聞いたガルマは「友人シャアが思いも寄らぬ大物であった事」「シャアの弱みを握った事」「シャアが打ち明け話をしてくれた事」に気を良くしてお人好しにも秘密を守って共闘する事を誓い合う。ダイクン派がザビ家に粛正された時にはガルマは幼かったので、ダイクン派がザビ家に深い憎悪を抱いている事など想像が出来なかったし、ましてやダイクンが暗殺された事も知る由も無かったのだ。ガルマにとってダイクンとは「父と共闘したが不幸にも病に倒れた偉大な革命家」にすぎなかった。奇麗な面しか知らないのだ。そして「僕が公王で君が首相だ。2人でジオン公国を動かして行こう。」等と目を輝かせて夢を語るガルマを見て仮面の奥でほくそ笑むシャアであった。

 こうしてシャアの行動は不問にふされ、リノは「人間関係上のトラブル」という理由でソロモンに送られる事になった。この一件をキッカケに、シャアとガルマの関係に微妙な変化が起り、ガルマが調子に乗り出す。しかし天然の王子様気質であったガルマはシャアの不快感に気がつく事は無かった。こうしてシャアはガルマ暗殺の意思を固めて行く。ザビ家の同年代の男に調子に乗られる事は我慢出来なかったのだ。なおこの頃、ガルマとイセリナの出会いが有った。シャアが目の上のたんこぶで無くなり、女も出来た。ガルマ絶頂期である。地球の市民達が未曾有の苦境に立たされている中、我が世の春を謳歌するガルマを見て、シャアは「やはりお坊ちゃんだな。」と思った。

 いずれにせよガルマは最後に「計ったなシャア」と言っている。明らかに何か知っている口ぶりだった。これはガルマがシャア=キャスバルであると知っていたと考えた方が自然に聞こえる台詞だ。

★ギレンの増長とジオンの全体主義化

 緒戦の勝利でギレンは支持、権力とも絶大なものを得て、増長して行く。熱気の籠った演説が国民を惹き付けて行く。しかし若者が熱狂する一方で年老いた人々はどこか冷めた目で見ているのだった。広大なスペースに大勢の人々があつまり、その様子はプロパガンダとして世界中に放送された。ギレンいわく「市民を犠牲にしてジャブローを守った連邦に地球の統治者たる資格は無い。故に我々が地球に降下し秩序と平和を取り戻し、真の統治者となるべきである。」という事であった。ある飲んだくれの退役軍人は演説を聞きながら「俺はアイツが一兵卒にすぎなかった頃を知ってるがよ、相変らずの青二才だぜ全く。」とこぼして若者に「ジジイは黙ってろ!」と怒鳴られる。典型的な全体主義国家の症状が表れていた。



★アムロやカイ

 カイはルウム戦役のニュースを見てザクに衝撃を受け、作業用モビルワーカーの教習所に通い出す。一方ガンダムが連邦軍の機密事項である事を知ったアムロはコンピュータのハッキングなどを利用してモビルワーカーやモビルスーツ(せいぜいザク)の研究に没頭していく。


★連邦軍の反攻

 連邦軍はズタズタになりながらも各地で現地国軍や民間人ゲリラと協力しながら小規模散発的な反攻作戦を続けていた。その一方で中央連邦群は来るべき大規模反攻作戦に備えて準備を始めつつあった。荒廃した都市で地元住民と国軍、連邦軍が反ジオンで団結していく様子を描く。ザビ家によって語られるジオンの理想は実際にコロニーを落とされた地球市民の大多数には響いていなかったのだ。こうした現実を見たシャアは父の名を悪の代名詞に貶めたザビ家への憤りを募らせて行く。


 ゲリラによる最初の大規模な反攻作戦が起きたのは北米であった。銃所持に比較的自由があったからだ。西海岸のある地区で連邦軍と国軍、市民ゲリラの混成部隊が結集し、バイカーやトラック野郎なども集まってくる。総数1000人にも満たない小規模な基地奪還作戦が始まった。戦車や歩兵、フライングプラットフォーム等の旧式兵器の類いでジオンのモビルスーツに対抗し、辛くも作戦は成功する。ここで獲得した基地から飛び立った部隊がエッシェンバッハのスパイから連絡を受けてガルマ隊を追撃する事になる。BGMはアメリカだけに英語版の哀戦士。作戦は夜明けと同時に始まり、朝焼けの中を走行する戦車や航空機にBGMがかぶって行く。


★ミハルのジオンとの接触

 ベルファストには元々イギリス軍の基地が有るだけだったが、ジオンの地球侵攻が始まりオデッサがジオンの手に落ちると連邦軍の駐留が始まった。人手不足に苦しんでいた連邦軍は各地で手当たり次第に兵を集めていたのだが、その中には質の悪いヤカラも多く混ざっていた。ミハルの家族は母子家庭で母親(日本人)とミハルと2人の小さな子供で暮らしていたが、ある日、飲酒運転をしていた質の悪い連邦軍のヤカラに母親がひき逃げされてしまいミハルは連邦軍基地に駆け込むが、連邦軍もそれどころじゃ無く、まともに捜査されなかった。生活が苦しくなったミハルは地元のマフィアと接点を持つようになり、まずは路上販売を始める事になった。マフィアからすればそれは試用期間であったのだろう。もちろんマフィアにショバ代やら上納金やらを売り上げから支払わなければならなかったが普通に働くよりは稼ぎは良かった。次の段階としてミハルはマフィアから「タバコみたいなもん」と諭されて大麻やコカインを扱うようになる。地元警察とは話がついていたので捕まっても大丈夫という事だった。そうこうしているうちにミハルはマフィアから信頼を得るようになったが、それは稼ぐ動機がハッキリしていたので良く働いたからだろう。そこで耳にしたのがジオン(マッドアングラー隊)のスパイの話だったのだ。連邦軍に恨みがあったミハルはこの話に飛びついた。


★ジオン潜水艦部隊の降下

 ジオン地球侵攻作戦の重要なカギの一つがバリュートシステムと相性の良い潜水艦であった。これら潜水艦にはザクマリナーが搭載されており、ズゴック等は未だ未配備であった。(アムロがガンダムに乗ったあたりで配備される)潜水艦が宇宙からパラシュート降下する場面はかなりのスケール感で描けるだろう。モビルスーツを搭載したジオンの潜水艦部隊は驚異的であり、制海権の掌握と戦艦等の拿捕に大きな役割を果たす。



★グフ

 地球侵攻編の後半にはグフが実戦配備される。グフは当初ザク同様に緑が基本カラーであり、シャアは赤に塗装されたグフを使用していた。なおシャアはその後ドズルにV作戦追跡の命を受けて降下時に使用していたザクを持って宇宙に帰るが、この時にシャアのグフが青に塗装されてランバラルに譲られた。ダイクン派として冷遇されていたラルにグフは当初は届けられなかったのだ。しかしシャアと築いたパイプによりグフを得る事が出来た。そしてラルの死後、現場の兵達の意思によってグフが青く塗装されるようになった。(当然、緑のグフも残っていただろう)ザビ家は内心ではこの現象を快く思わなかったがそれを口にする事は出来なかったのだ。


★プロトタイプガンダムのロールアウト

 ジオンがグフを実戦配備するのと同時くらいにサイド7でプロトタイプガンダムがロールアウトされる。プロトタイプガンダムは単なる運動性テストのための機体にすぎなかったため、装甲材は通常であった。そのため(オリジン版のように)サイド7に侵入してきたザクに撃破されてしまう。ジオン地球侵攻編ではテスト運転が行われるのみである。なお、プロトタイプガンダムのテストに成功したテム•レイは酔っぱらってアムロにその映像を見せてしまう。テムにはアル中の傾向が有ったのだ。普通に考えてこんな子供ウケしそうなロボットの開発を成し遂げた父親が息子にそれを見せたいと言う衝動を抑えられるわけが無かったのだ。


★カラカス攻略戦


 ジオン地球侵攻編のラストはベネズエラのカラカス基地攻略作戦。ここはオリジンでジャブロー攻略の再前線基地が有るとされた所だが南米で唯一のジオンの拠点なので当然ながら再前線基地となった。ジャブロー降下作戦ではキャリフォルニアベースからカラカス基地に戦力を集中させた後で、直接的にはカラカス基地を拠点として行われた。なおジャブロー降下作戦後にカラカス基地は放棄されている。
 ジオンとしてはカラカスは大西洋に面しているため、ヨーロッパ戦線やアフリカ戦線との潜水艦を用いた行き来が行いやすく、その点で好都合であった。オデッサ作戦終了後は多数の敗走勢力がカラカスにたどり着いた事もジャブロー攻略戦へGOサインを出すキッカケになったと言う。こうした理由で大西洋は激戦区であったためマッドアングラー隊なども配備されていたのだ。
 連邦軍としてはジャブローの喉元に突きつけられた剣であるカラカスのジオンを排除したかったが、ジャブロー基地から戦力が出払ったスキをキャリフォルニアベースのジオン軍につかれる事を恐れて身動きが取れずにいた。実際カラカス攻略戦時には応戦のために手薄になったジャブローにキャリフォルニアベースからの空爆が行われている。
 なお、オデッサ作戦後はヨーロッパを勢力下に治めた連邦軍がその戦力を持ってカラカス基地を叩くプランを立てていたが、それを察知したジオンが先手を打ってジャブロー降下作戦に踏み切ったのだった。



 カラカス基地攻略作戦には北米基地から航空機隊が、大西洋から潜水艦のマッドアングラー隊が参加した。モビルスーツは約60機程度でMS06ザクの他に水陸両用ザクとグフ(緑)が含まれていた。この時の作戦手法は後のジャブロー降下作戦に活かされたと言う。


 ジオン襲来のシーンでのBGMは地獄の黙示録でも使われた「ワルキューレの騎行」この音楽の中、モノアイを光らせてザクやグフが降下していく。
 

 なお開戦前からジャブローを探っていたシャアは志願してキャリフォルニアベースからの部隊に加わり赤いグフで参戦している。となるとガルマも引っ込みがつかずモビルスーツ(グフ)で参戦。ルウム戦役でシャアが活躍するのをモニターで見つめるだけだった苦い経験から、この作戦では参加すると言って聞かず、シャアもキャスバルで有ると言う秘密を握られているので制止する事は出来なかった。(この点を後にドズルに叱責される)


シャアは作戦終了後にはマッドアングラー隊のフラナガン•ブーンと知己になり、ジャブローについての情報交換を行っている。ここで作戦後にドズルからV作戦追跡の指令を受けたシャアは航空機でキャリフォルニアベースにとんぼ返りするが、同時に自らのグフをランバラルに届けるようにマッドアングラー隊にたくしたのだった。エンディングは哀戦士の女性ボーカル版。作戦後の風景と帰還するシャア等のシーンに重なり、ハイライト映像のエンドロールに移行する。

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