2019年5月23日木曜日

終戦〜逆襲のシャアまでの経緯(1)

 アバオアクーでキャスバルである事を認めたシャアは艦隊を率いて地球圏を離れアステロイドベルト(小惑星帯)のアクシズに脱出。なお新約ガンダムにおける当時のアクシズは小惑星を中心に環状のスペースコロニーが形成されており、その環状コロニーの回転軸(AXIS=アクシス)になっている事からアクシズと名付けられた事にしたい。「ス」が「ズ」になるのはジオン訛りと言う事で。アクシズは公式設定通りジオンが木星への中継基地として利用していたため、当時から居住施設は有った。


 問題はここにミネバ•ザビとその一党も脱出して来た事であったが、ミネバの艦隊はグワジン1隻と護衛のムサイ2隻のみで戦力としてはシャアの艦隊が圧倒しており、またミネバ一党に既に母子だけになったザビ家を守るために戦う士気も無かった。都合が良かったのはミネバ一党がドズル派で有った事だ。シャアが率いていた兵達の多くはギレンとキシリアの恐怖政治に反発していたのであって、デギンの政治や武将としてのドズルは支持していた。またシャアも自分が祭り上げられたのはアバオアクーでのギレンとキシリアの恐怖政治から逃れたい兵達の一時的な熱狂によるものであり、それが永続するものでは無いと言う冷静な自己分析が出来ていた。つまりもしここでザビ家に対する私怨から幼いミネバを殺害すればアクシズは一気に混乱に陥り空中分解するだろうと考えたのだ。そして何よりジオンの遺児とザビ家の遺児が共存すると言う事がジオンの後継者を名乗る上で好都合であった事からミネバ一党でデギン•ザビの側近で有ったマハラジャ•カーンを摂政に立てて自らは総帥として実質的なアクシズの指導者となった。もちろんシャアはまだ20代前半であったので優秀なブレーンをワキに抱えての事だったが。このシャアの判断は極めて政治的なものであり既にジオンの再興とスペースノイドの自治独立を最終目的にしている事は明確であった。


 ところがアクシズの運営が軌道に乗りかけてきた時、地球圏で異変が起きる。大戦後の地球連邦軍の再建が本格化し、UC0083年にジオンの残党狩り組織であるティターンズが発足したのだ。当初は静観していたアクシズであったがUC0085年末くらいには看過出来ない状況になり、対策の検討が始まる。連邦の目は未だアステロイドベルトまでは届いていなかったが、このままティターンズが成長を遂げると自分達も存続の危機に陥ると予想されたからだ。


 ただ当時のアクシズの戦力では表立ってティターンズに対抗すると連邦軍の圧倒的な戦力で潰される事は明白であった。そこでシャアはアクシズから有志を率いて密かに地球圏に旅立った。クワトロ•バジーナを騙り反地球連邦組織のエゥーゴの設立に尽力し、これを持ってティターンズを叩く作戦を取る事にしたのである。何もシャア自ら出向かなくともと思われたが、こうした仕事はシャアの政治力と人脈が無ければ当時のアクシズには不可能だったのだ。


 エゥーゴにおけるクワトロは予想以上の働きを見せ、人望も集めた。また赤いモビルスーツを駆る事で赤い彗星を仄めかしたので地球圏のジオン残党をかき集める事にも成功し、エゥーゴの指導者に推挙されるまでに至る。そして実際にティターンズを追いつめる事にも成功していたのだった。そしてクワトロも引き際を逃し、エゥーゴの活動にズルズルと引きずり込まれて行き、かつてのホワイトベースクルーと共闘するなど必要以上に深入りしてしまう。


 この状況をアクシズで苦々しく見ていたのがマハラジャ•カーンの娘であるハマーン•カーンだった。ティターンズが壊滅状態に陥り、エゥーゴが連邦軍内で正当性を持つに至ってもまだ身を引こうとしないハマーンはクワトロに痺れを切らした。ハマーンから見ればクワトロの振る舞いは裏切りに等しかったのだ。そしてハマーンはミネバを立ててザビ家の再興を旗印にネオジオンとして名乗りを挙げて、エゥーゴとティターンズの戦いに介入して来たのだ。


 一方でシャアから見てもハマーンの行動は容認出来るものでは無かった。時期尚早なネオジオンの決起はアクシズを単なる過激派に貶め、長期的に見ればマイナスにしかならない事は明らかであったからだ。また、当時既にナチスのような扱いを受けていたザビ家を表に出す事も甚だしいイメージダウンであった。この結果、シャアはアクシズに見切りをつけ、それと同時にアクシズのコアな親ダイクン派もハマーンに見切りを付けてシャアとの接触を計ろうとしていた。


 しかしもちろん、シャアとしては連邦軍に与する気は毛頭無かった。ハマーンと決別した後にエゥーゴのメンバーに地球連邦の首相を目指す事を勧められて気が揺らいだ事もあったが、エゥーゴに参加する事で改めて連邦の腐敗を実感して地球の社会に幻滅した事でスペースノイド自治独立を目指す決意はより強固になったのだ。そしてグリプス戦役が終結すると同時にその混乱に紛れてシャアは姿を消し、自分に賛同するジオン残党その他のスペースノイド勢力を結集させて新生ネオジオンの結成を目指す事になった。


 そしてUC0092年、シャアは手持ちの艦隊を率いてスペースコロニーのスウィートウォーターを占拠しネオジオンとして名乗りを挙げた。しかし保有艦船の数でも50隻に満たない彼等の戦力では連邦軍に勝利してスペースノイドの自治独立を確立するなど到底不可能であった。なお連邦軍によるジオン残党狩りが進んだ結果、この時点でシャアのネオジオンを凌ぐ規模の勢力は存在していないし、旧ジオン公国を増長させた教訓を得た連邦政府が再びあのような軍事大国の台頭を看過する可能性も無かった。このままではスペースノイドの自治独立の芽は永遠に刈り取られてしまう。そう考えたシャアは最後の手段とも言える大きな駆けに出たのだった。


 アクシズを地球に落として全てのアースノイドを抹殺するという計画である。






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