アバオアクー戦の後、連邦とジオンは終戦協定を結ぶが、これは実質的にはジオンの降伏であった。ギレンとキシリアは敗戦=死を意味するので、例えアバオアクーで破れても徹底抗戦する構えでいたが、国内事情はそうでは無かったようだ。
ローゼンベルク家はジオン最大のスポンサーだったが、彼等にしても世界経済を牛耳る巨大財閥群の使い走りでしか無く、その巨大財閥群が本土決戦になる前に終戦を求めていたのだ。ジオンの優秀な技術力を欲したのと、その工業力が戦争で壊滅状態に追い込まれたコロニー群の再建に必要であったからだ。そこで彼等はローゼンベルク家のエージェントを通してジオンのダルシア•ハバロ首相と戦争継続に消極的であったデギン•ソド•ザビに接触し、密かに和平への道を探り始める。
彼等はジオン国内でデギン派(右派穏健派)と反ザビ派(左派)を野合させる事によって一大勢力を生み出し、出来るだけ早い段階で終戦協定を結ぼうと考えていた。しかし反ザビ派が戦後もザビ家が何等かの形で権力の座に居座る事を嫌ったため、この作戦は難航していた。この状況に業を煮やして一大決心をしたのがデギンである。彼はアバオアクー戦の直前に自らの艦隊を率いてレビル将軍の連邦軍主力部隊の陣中に講話に向けた話合いのために出向いて行った。「話合い」とは言え、この段階でのこのような行動は実質的には投降に等しいものがあり、その後のデギンの立場は保証されていない。このように捨て身の作戦で自分が講和条約の締結に本気で取り組む事を示す事でデギン派と反ザビ派の野合を促進しようと考えての行動だったのだ。
しかし結果は良く知られているように、ギレンの放ったコロニーレーザー砲によってデギンはレビルもろとも死亡してしまう。ギレンにとってはデギンの行為はギレンの身柄を連邦に売るに等しく容認出来る事では無かったのだ。しかしこの結果、反ザビ派とデギン派にとってデギンの存在がアイコン化し、野合は一気に成立した。
さらにアバオアクー戦でキシリアとギレンが死亡し、ザビ家が実質的に壊滅すると言う予想外のアクシデントが起きる事によって、このデギン派と反ザビ派の野合による穏健派は瞬く間に国内で最大勢力となり、ジオンは一気に終戦に向けて動き出したのである。
しかし、この本国とグラナダの戦力を残したままの終戦は独立派と徹底抗戦派にとってはとうてい容認出来るものでは無かった。アバオアクー戦によって連邦宇宙軍の戦力もまたズタズタにされていたので戦力を結集させればアバオアクーの奪還すら可能な状況であったからだ。そして彼等は暗礁宇宙やアクシズ、さらには地球の各地に身を潜めてジオン残党として徹底抗戦の道を選ぶ事になった。
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